-Background-
開発背景
このプロジェクトが始まったのは、2018年頃。広島県の情報機器を活用した補助金事業の話がきっかけでした。当初は、牡蠣の餌となる植物性プランクトン量を測定する案なども検討されていましたが、最終的に「筏が今どこにあるのかを把握したい」――という声から、このプロジェクトは始まりました。
-Overview-
システム概要
このシステムは、牡蠣養殖用の筏(イカダ)や作業船の位置をGPSで把握するためのIoTシステムです。
筏や船に取り付けた端末が位置情報を送信し、スマートフォンやパソコンから確認することができます。

-Approach-
どのようなシステムを目指すか
初期段階では、ソニーから提供を受けた端末を作業船に取り付け、位置情報を取得する実験を重ねました。その後、ELTRESを使用した自社製の通信端末を開発し、小型化や電池の長寿命化など、実運用を見据えた改良を進めていきました。海上での実用性を考慮し、用途に応じて電源方式や通信頻度など細かく使い分けているのが特長です。

作業船の端末
船用の端末には全方位からの光で発電できる円筒型のソーラー電源とバッテリーを搭載。頻繁に向きが変わっても発電量が変わらず、降雪や落ち葉等の飛来があっても全体が隠れにくく発電を確保しやすいのが特長です。位置情報は3分間隔で送信しています。

筏の端末
筏へ設置した端末は頻繁なメンテナンスができないため、長期稼働かつメンテナンスフリーを想定。防水性と通信性能を両立させるために樹脂パイプに収納し内部には大容量のバッテリーを搭載。位置情報送信は1時間に一回とすることで理論上は約7年間連続稼働する設計としました。


Key Priorities
開発で重視したポイント
- 耐水性
海上での使用を前提とした、完全防水設計。
- 長期間の電池持続
筏では頻繁なメンテナンスができないため、5〜7年の長期稼働を想定。 - 作業の邪魔にならないこと
現場作業を妨げないサイズ感と、取り付けのしやすさ。
これらを満たすことが、実用化のための重要な条件でした。
実際の運用
森脇さんによると、実際の運用では一定の手応えを感じているとのこと。
特に、船の位置が把握できることで従業員の操船ルートの確認や、作業状況の把握がしやすくなりました。
筏に関しても万が一流された場合でも、位置を特定できる点は安心材料になっています。
今後の改良・進化の可能性
今後の展開として検討しているのが、「牡蠣カルテシステム」です。
これは、筏の位置情報に加えて、
- 種付けの時期
- 産地情報
- 作業履歴
といった情報を一元的に管理する仕組みです。
さらに、通信頻度の変化などから筏が沈みかけている状態を検知し、異常を早期に察知する機能の可能性も検討されています。
水産業 × IoT の可能性
牡蠣養殖をはじめとする水産業では、筏の位置管理や状態監視など、IoTが活躍できる場面は少なくありません。
将来的には、筏の位置情報をボートなどのナビゲーションシステムと連携させることで、海上での衝突事故防止といった安全面への貢献も考えられます。
一方で、導入を広げていくためにはコストと実用性のバランスが重要になります。端末価格が下がれば、より多くの事業者にとって現実的な選択肢になる可能性があります。
背景
海とともに生きる現場の課題
牡蠣養殖の現場では、自然環境の影響を常に受けています。特に台風や強風時には、養殖筏(いかだ)が流されてしまうリスクがあり、位置の特定や回収に大きな負担がかかっていました。
「安心して養殖に専念できる仕組みが欲しい」――そんな声から、このプロジェクトは始まりました。
